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2013年10月22日 (火)

BNN - 現れた女

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BNN - 現れた女   2013年10月22日

がさつな足取りでデンの街中を歩く間、彼の顔を覆うスカーフは、海からのそよ風に吹かれて微かにはためいていた。 こんな稼業についてはいるが、彼はデンを好きになったことは一度もない。ここには、自分の手に負える相手ではないことにも気づけずに誰かにダガーを突きつけたがる連中もいるのだ。あしらうことは容易いが、彼はそんな気分ではなかった。そのオーラが彼の所作から放たれていたのか、酒場に着いて乱暴にドアを押しあけるまで、邪魔者は一人も現れなかった。全員の目がドアに向けられ、酒場の喧騒は突然静まりかえったが、それも一瞬のことで、すぐに全員が元の方向に目を戻した……たった一人、薄汚れた歯を見せて彼にニヤリと笑いかけた男を除いて。

「おう、来たか。待ってたぜ」そう言うと、男は傷だらけの古いテーブルに薄汚れたゴールドのコインを乱暴に置き、持っていた汚いトランプも伏せて置いた。「ついてこい。話はそこでする」そう言って男は肉付きの良い手を相手の肩に乗せながら裏の小部屋に連れて行き、彼の背後でドアを閉めた。部屋の中に入った男はスカーフを外してバッグを下ろしたが、バッグは置かれたはずみにカチャッと音を立てた。「リッキー、面倒な事にはならなかったろうな?」と、テーブルの反対側に腰をおろしながらシャンティ(Shanty)は言った。彼の息はエールの匂いと腐敗臭が混じり合っており、リカルド(Ricardo)は鼻にシワを寄せながら冷笑を浮かべた。

「たいした面倒はなかったが、聞きたいことがある。満足な答えが聞けりゃ、ボーナスはチャラにしてやる。だがロクな答えじゃなければ、このまま帰らせてもらうぜ」

テーブルの反対側に座る男は心底おかしそうにばか笑いし、彼の顔はたちまち赤みを増した。「報酬の半分は前払い済みなんだ。そのバッグと一緒にここから帰すわけには行かねえな。だが、話してみろよ、この老いぼれシャンティさんを楽しませてくれや」

「侵入にはたいして苦労しなかったさ……計画手順が問題じゃねぇんだ」老いた男を睨みつけ、男はするどい眼をさらに細めた。「俺ァな、隠し事されんのが大っキライなんだよ。この仕事、一体どういうことだ?」バッグを開いて一振りの剣を取り出すと、男はそれをいきなりテーブルの上に放り投げた。「俺が何を聞きたいか、これで判るよな?」

テーブルの上の剣は見事な品だった。ミノック職人の手により打ち出されたヴァロライトの鋭い刃……そして柄に近い剣の根元付近には紋章が彫り込まれていた。八本の光と闇の線が交差する正方形を背景に、一匹のシルバーサーペントが十字架のようなものにからみついたデザインだ。ブリタニアでは誰もが知るシンボル……それこそが彼らの会話の主題なのである。剣をざっと見たシャンティは、さらに大きなニヤニヤ笑いを顔に浮かべた。「コイツを持ってるんなら、答えはもう判ってるんだろうが。オメーだって、これがどっかの貴族サマの館レベルのヤマだと思って受けたワケじゃねえだろうがよ。今さらとぼけんなよ、リッキー」

この答えにリカルドは不機嫌そうに眼を細めた。「それがてめぇの答えか。だったら、コイツの正体を聞いてもマトモに答えそうにねぇな。コイツがパワーを持ってることくらい、俺は感じとれるんだぜ」 そう言いながらリカルドは内ポケットから美しい宝石を取り出した。「だからコイツはてめぇにも、てめぇの黒幕にも渡さねぇ。さて、俺はもう休ませてもらうぜ。コイツは当分俺のモンだ」

こう言い放つとリカルドは背を向けたが、彼が足を踏み出そうとするより早く、鋭い音が小部屋の静寂を切り裂き、リカルドは手首に激痛を感じると同時に強い力で後ろに引き倒された。見ると、一本のムチが前腕にからみついている。そして黒い皮の装束に身を包んだ女が一人、暗がりから歩みでてきた。なんらかの魔法で身を隠し、ずっとそこに潜んでいたのだ。ねっとりとよく響き、それでいて花崗岩をも切り裂きかねない鋭さも含んだ声で女は言った。「そのうち判るんじゃないかしら、かわいいシーフの坊や。それは私の物だってことが」ヘビのような笑みを浮かべた女は膝をつき、リカルドの手をこじ開けてクリスタルを奪い取った。そして鞭を腰のあたりに納めると、少しの間眺めてからクリスタルをポケットに入れた。

「お行き。お前もバカではないでしょ。私に歯向かえばどうなるか、説明は必要ないわよね?」女はシーフの襟元を掴んで立たせると、埃を払ってやった。そして、浮かべた微笑みとはまるで逆の意味の言葉を発した。「ご想像におまかせするわ」紙のように蒼白になり半狂乱で部屋から転がりだしたリカルドを、女とシャンティの笑い声が追い立てる。リカルドはゲートに向けて一目散に逃げていった。まるで幽霊を見てしまったかのように。

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